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相続した土地いらない時は放棄できる?手続きや注意点も紹介

相続

處        浩之

筆者 處 浩之

不動産キャリア23年

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相続した土地を「いらない」と感じたとき、どうすれば良いのか悩んでいませんか?処分や国への帰属、相続放棄などさまざまな方法があり、それぞれメリットや注意点が存在します。本記事では、相続した不要な土地について取れる選択肢や手続きの流れ、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。土地を持ち続けるリスクを減らし、安心して次の一歩を踏み出すための情報をまとめました。

相続した土地が不要な場合に知っておくべき制度の全体像(相続放棄・処分・国庫帰属制度など)

相続した土地が不要な場合、手放すための主要な制度や方法には以下のような選択肢があります。まず、相続放棄という制度があり、これは土地だけでなく相続財産すべて(預貯金や債務など)を一切相続しない手続きです。単一の土地のみを放棄することはできません。そして、相続放棄をすると、他の相続人が財産管理を引き継ぐまで、自ら保存義務が継続する場合がある点にも注意が必要です 。

次に「相続土地国庫帰属制度」という制度もあります。これは、相続や遺贈によって取得した不要な土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう制度です。法務局での審査を経て承認されれば、10年分の土地管理費相当額(負担金)を納付することで、所有権が国に移転します 。

また、寄付や売却という方法もあります。売却によって買い手が見つかれば、維持管理費の負担から解放されるとともに代金を得られる可能性があります。ただし、条件の悪い土地では買い手が見つからないリスクもあります 。

下表は、土地を手放す際の主な方法を比較したものです。

方法対象特徴
相続放棄相続財産すべて債務も含め一切を放棄するが、土地以外の財産も放棄
国庫帰属制度不要な土地法務局での審査後、負担金を納めれば国が所有権を取得
売却・寄付土地買い手や受け入れ先があれば、手放しつつ対価や安心を得られる

これらの選択肢を把握し、ご自身の状況や希望に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。

相続放棄の条件と手続きの流れ(期限・取り扱い)


相続放棄を希望する場合、まず押さえておきたいのが「熟慮期間」です。これは「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヶ月以内に家庭裁判所へ必要書類を提出することが求められます(民法915条1項、938条)。なお、この3ヶ月という期間は申述書の提出期限であり、裁判所の審査完了まで含めた期間ではありませんので、その点はご安心ください。

提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。提出にあたっては以下のような書類が必要になります:

項目内容備考
申述書相続放棄の意思を明確に示す書類裁判所所定の書式を使用
必要戸籍・住民票被相続人・申述人の戸籍謄本、除票等兄弟姉妹など第3順位の場合は出生から死亡まで全て必要
費用収入印紙800円、郵便切手(数百円程度)裁判所により異なる

具体的には、被相続人の住民票除票や戸籍附票、申述人の戸籍謄本が基本となり、兄弟姉妹などのケースではより多くの戸籍が必要になります。

また、戸籍謄本などの書類には発行から3ヶ月以内という有効期限があり、期限切れの書類で申立てを行うと受理されない可能性があるため、取得は手続き直前がおすすめです。

申述後、家庭裁判所から「照会書(回答書)」が送付される場合があり、相続を知った時期や関係性などについて回答します。回答書を提出して問題がなければ、しばらくして「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄が正式に認められたことになります。

熟慮期間である3ヶ月以内に意思決定が難しい場合は、「熟慮期間の伸長」の申し立てが可能です。相続財産の調査が困難な事情などについて裁判所へ申立てることで、1~3ヶ月程度の延長が認められることがあります。

注意点としては、次のような行為をすると相続放棄が認められず「単純承認」とみなされるため、十分注意が必要です:

  • 預貯金を払い戻したり、不動産を使用・処分したりする行為
  • 期間中に財産の調査や管理を行った場合など

これらに該当すると、相続放棄の申請は認められなくなるリスクがありますので、慎重に判断して進めましょう。

相続土地国庫帰属制度を利用する際のポイント


相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国に帰属させ、所有と管理から解放される手続きです。初めに更地であること、汚染されていないこと、抵当権などが設定されていないことなど、土地の状態が制度の利用要件に合致する必要があります。

要点 内容
利用要件 更地であること、土壌汚染・抵当権・使用収益権がないことなど、法務省が定める禁止・不承認要件を満たさないことが必要です
費用 審査手数料14,000円/筆と、承認後に10年分の管理費相当の負担金(種目により異なる金額)
メリット 管理義務や固定資産税などの負担から解放される一方、申請可能な土地には条件があり注意が必要です

まず、制度利用の条件として、制度の趣旨に反する「建物が残っている土地」や「抵当権や地上権などが設定されている土地」、「土壌汚染されている土地」などは、申請段階で却下され利用できません。また、崖のある土地や地下に除去が必要な有体物がある土地、境界が不明確な土地なども不承認となることがあります 。

次に、費用面では、申請には審査手数料として土地1筆ごとに14,000円が必要です(申請不承認の場合でも返金されません) 。承認後には、10年分の標準的な管理費相当を負担金として納付しなければなりません。具体的には宅地や田畑は原則面積に関係なく20万円ですが、市街化区域や用途地域などの特定地域では面積に応じた算出となります。森林などの場合も面積によって変動します 。

制度を利用する最大のメリットは、土地に関わる将来の管理責任、固定資産税や維持管理の負担から解放されることです。ただし、利用できる土地は条件が厳しく設定されているため、該当するかどうか慎重に確認する必要があります。また、隣接する複数筆の土地をひとまとめにして負担金を算定する特例も活用すれば、費用負担を軽減できる可能性があります 。

相続放棄後や制度利用後にも留意すべき管理義務とリスク


相続放棄をしたあとでも、場合によっては土地や建物など相続財産に対する「保存義務(旧称:管理義務)」が存続することがあります。まず、相続放棄時にその財産を「現に占有」している場合には、次順位の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同様の注意をもって保存する義務が課されます。

次に、「単純承認」とみなされる行為には十分注意が必要です。例えば、不動産を売却したり賃貸したりする処分行為や、預貯金の引き出しなど相続財産を使用・隠匿する行為は、相続放棄が無効となるリスクがあります。

さらに、相続登記を放置すると将来トラブルにつながります。2024年4月より相続登記が義務化され、3年以内に登記しなければ10万円以下の過料が科せられる可能性があります。登記をしないことで第三者に登記されて権利を失ったり、相続人が増えて登記手続きが困難になったりするなど、長期的なリスクも生じます。

以下はこれらのポイントを整理した表です。

留意点 内容 リスク
保存義務(管理義務) 相続放棄後も「現に占有」している財産を次順位相続人等に引き渡すまで保存 不備があれば近隣トラブルや損害賠償の対象に
単純承認とみなされる行為 財産の処分や使用、隠匿など 相続放棄が無効となる可能性
相続登記の義務化 3年以内の登記が義務。未登記は過料・権利変動あり 過料、相続関係の複雑化、権利喪失など

以上のように、相続放棄や国庫帰属制度の利用後においても、「保存義務」「単純承認のリスク」「登記義務の未対応」といった問題が残ります。専門家のアドバイスを受けながら、適切な対応を進めることをおすすめいたします。

まとめ

相続した土地が不要な場合、相続放棄や相続土地国庫帰属制度など、手放すための複数の選択肢があります。しかし、制度ごとに注意点や条件、手続きの流れが異なり、放棄や国庫帰属には期限や費用、登記の義務も伴います。また、相続放棄後も一定期間は管理責任が発生する場合があるため、慎重な対応が求められます。将来的なトラブルを回避するためにも、早めの情報収集や正しい手続きがとても重要です。当社では、相続した土地についてのご相談も丁寧にサポートしていますので、お気軽にご相談ください。

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